☆説明
コレ、坂口安吾が「復員殺人事件」という原題で、昭和24年に「座談」(文芸春秋社)に犯人当て懸賞付きで連載していた推理小説ですが、雑誌の廃刊と同時に中断してしまった作品なのであります。そして未完のまま亡くなってしまったのですねー。
それを、大乱歩の肝入りで、高木彬光先生が続きを引き受け、昭和32~33年「宝石」誌上で改題・完結させたものです。
それが昨年何故か、単行本にまとめられたと……図書館でコレを見つけた時は、自分の目を疑いましたよ。
実はどり、卒論が坂口安吾でございます。かなりの安吾者でございます。
さあ皆さんご一緒に唱えましょう 「堕ちよ、生きよ」(←蹴)
卒論の際テキストにしたのは、個人持ちのちくま文庫版の全集と、大学図書館にあった冬樹社版でした。そのどちらにも、コレの完結版は載ってなかったんじゃないかと思います。覚えがないから。(文庫版は今も持ってるので調べようと思えば調べられるのですが、押入の底なので勘弁してくださいm(__;)m)
☆あらすじ
昭和22年小田原の成金網元倉田家に、戦死したと思われていた次男安彦が帰還した。身体に重い障害を負い、本当に本人かどうかは出生前に残されていた手形との比較でしか確認できないような姿になって。
しかし帰還して間もないうちに、その安彦を含め、倉田家では次々と一族が何者かによって殺害される。
また倉田家では戦中の昭和17年にも、長男の公一とその幼い息子が、怪しげな状況で轢死している。
5年前の事件と、今回の連続殺人事件に関連はあるのか?
動機は倉田家の財産狙いなのか? それとも家内の乱れた男女関係のもつれが原因なのか?
そしていったい誰が?
『不連続殺人事件』でも活躍した、アプレゲール探偵巨瀬博士と作家矢代が倉田家に乗り込み、推理を開始するが……
☆感想
やっぱ安吾好きだわ~~と思ったです。ああもう、この文体のリズム感がたまらん
( ̄¬ ̄)ジュル・・・
というのはさておき、ミステリとして語ってみますと、この作品で特徴的なのはやはり、中断された遺稿を他人が完成させたというあたりでしょう。約2/3までの19章を安吾が書き、その後の20~30章を高木彬光先生が引き継いだ形です。
犯人当て懸賞小説として連載されていたこの作品、安吾は問題提示編として27章までを予定していたそうですから、問題と手がかりを書ききらないうちに中断してしまったということで、さぞかしバトンを受けとった方は困ったことでしょう。
ええ。
高木先生のご苦労の後がここかしこに。
申し訳ないですが、安吾はどういう解決編を用意してたんだろうな……と思ってしまいました。多分、高木先生の解決編とは違ったんじゃないかなと(汗)
いえ、これはこれで悪くはないと思いますよ。
でもね、前半で安吾が使ったギャグを、高木先生が後半で2回も繰り返して使うのはいかがなものかと……_| ̄|○
http://www.toyoshoin.com/sinnkan2.htm
PR