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犯人視点2作目は、2006年版「このミス!」2位になった作品です。 新本格マニアとしては、密室物ってどうしても押さえたくなるんですよね。ネタ袋の底の底まで漁り尽くされた密室トリックが、どのようにアレンジされて出てくるのか、お腹いっぱいなんだけど、でも、味は見てみないと……みたいな。 この作品、トリック的には目新しいものはございません。最初の方でトリックや殺害方法は全て明らかにされてしまうわけですし。なんたって犯人視点でございますからして。 一見完全犯罪に見える密室殺人が、扉が閉ざされたまま、そればかりか、事件と認識されないまま、探偵によってじわじわと追求されていきます。読者も探偵の観察が進むにつれ、あれミスったんじゃないかな、とか、この言動はヤバいだろ、等など犯人を応援しつつも、完全犯罪のほころびを見いだす喜びに浸ることができます。 殺人の動機は新しかったです(多分)。どりは半分くらい読むまで、気付きませんでした。もっと鋭い人なら、最初の方でわかるのかもしれませんが…… それからこの作品で面白いのは、犯人と探偵がそれなりに相思相愛の若い男女なのですね。犯人は、探偵に追及されていくのが、最後には快感になってるんじゃないの、みたいな(笑)。 あ、そっか、もしかして、密室殺人付きの恋愛小説なのかな? PR |
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たまたま、連続して犯人視点(三人称ですが)のミステリを2冊続けて読みました。 この『99%の誘拐』は初版が1988年なのですが、2005年の「この文庫がすごい!」のミステリ&エンタメ部門1位になっているのです。よーするに名作ってことですな! 物語自体は、とても面白いです。12年の時を超えたふたつの誘拐の真の関係が見えてきたときは「おお!」ですし、主人公=犯人の行動もドラマチックでロマンチック。三人称とはいえ、感情移入するのは、どうしても主要視点である犯人です。ですから、どこで破綻するかと、ドキドキできますし、成功して欲しいと心から願ってしまう。犯人が若い男性であることも、ドキドキの要因かもしれませんが(笑)。 それから驚いたのは、コンピュータを駆使した事件だってことです。88年に書かれたものですよ!岡嶋さんの片割れ(岡嶋二人は2人の作家の合名です)井上夢人さんがいくら専門家とはいえ、当時こんな犯罪方法を考えていたとはさすがです。どりのレベルでは、現在読んでも、驚きの技術とトリックであります。犯人、すっげ頭いいな~、と思いました。 10数年経っても読み継がれている理由は納得!って感じですが、コンピュータに詳しい方には、色々クレームもあろうことかと存じます。しかしそこはアレ、20年近く前の作品なんだからと思って、寛大な心で読んだらきっと楽しめるんじゃないかと。 |
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「遅っ」と言われそうですが、今頃読みました。伊坂幸太郎作品は結構読んで これってノワールですよね?いくらオシャレでロマンチックでも、銀行強盗は 現実からちょっとだけずれていて、ほどよく荒唐無稽な物語ってのは、 しかも!これ大事ですが、見事なキャラ立ち(笑)。4人のギャングそれぞれが 伊坂作品は、確かにリアルさには欠けるでしょう。無理な設定も随所に見られます。 そしてキャラ立ち(しつこい)。なんで自分が伊坂作品が好きなのか、 この作品は映画化され、今春ロードショーです。主人公の成瀬が大沢たかお |
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新本格ミステリの雄、島田荘司氏は、ここ何年も「脳」というものをテーマにした作品を発表し続けています。 この中編集『エデンの命題』は、シリーズものではないのですが、やはり脳に こだわった作品2篇が収録されています。 「エデンの命題」では、アスペルガー症候群という、特別な自閉症について。 「ヘルター・スケルター」は、脳の器質障害について。 それぞれについて語りたいことはいっぱいあるのですが、具体的なネタにふれるのはやめておきます(ムズムズ)。 どりが島田氏の作品を好きなワケは、毎作、あっと驚く大技のトリックや、どんでん返しに、大いなるカタルシスを得られるところなんですが、それだけではありません。知的好奇心を刺激されるところも好きであります。この本でも、「エデン…」を読んで自閉症について調べたくなりましたし、「ヘルター…」は、実際の歴史的な出来事を題材にしてますので(ネタバレになってませんよね?;;)それについてもネットであたってみたりして。 それから、島田氏の作品は時々とても切ないです。名作『異邦の騎士』などは、涙なしには読めません。「エデン…」では、自閉症の子どもたちが、どのような社会生活を強いられているのか、患者の一人称によって書かれています。「ヘルター…」では、ベトナム戦争について書かれています。 涙まではいきませんでしたが、どちらも、なかなか切なかったです。 『エデンの命題』、ミステリマニアとしては、トリックが小技かもと思ったりもしましたが、その分、普段ミステリを読まれないけれど、脳と精神の関係などに興味のある方にも、お楽しみ頂けるのではないかと思います。 |
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偕成社文庫を中心に、児童文学を、何のけれんもなく、ただひたすら読みふけっていた、正しい文学少女だった頃を思い出しました。理不尽な現実を徐々に認識しつつも、本の中ではメルヘンを素直に受け入れ、本の中のような澄みきった世界が日本のどこかにきっとあるんだ、と素直に信じていた頃の感動を、ちょびっとだけ取り戻せたような…。小学校高学年の、思春期に入る前の自分に読ませたい。 昭和三十年代の、瀬戸内の美しい島という舞台は、いかにもって感じだし、ステロタイプなエピソードとキャラクターばかりなのに、いえ、だからこそ、懐かしくて、せつない。 こういういかにも性善説っぽいのを読むのは久しぶりだったので、もしかしたら途中でアレルギー起こすかも、と恐れつつ手をつけたのですが、最後まで一気に読んでしまったし、ラストでは泣いてしまいました。 そんな自分が照れくさい。 でも、たまには素直に感動してみるのもいいじゃないか、みたいな、そんな作品だと思います。 それにしても、大活字&ふりがな版がこれほど読み辛いとは、私も大人になったものだなあ(笑) |
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